『方法序説』読了.
- 作者: デカルト,Ren´e Descartes,谷川多佳子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1997/07/16
- メディア: 文庫
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"Je pense, donc je suis." 論文を書くときにはラテン語が通例だった時代に、フランスで生まれたデカルトは『方法序説』をフランス語で書いている。社会的寛容度の高い彼の文章を読むにつけ、誰にでも読めるようにそうしたのかなと感じた。
冒頭のフランス語はみなさまも良くご存じの「我思う、ゆえに我あり」のそれ。その言葉だけが踊り出ているような方法序説だけれど、読み進めて発見があるというよりは本当にデカルトの寛容度の高さに感動する。自分自身へ抱く疑問や未熟さに卑屈になりすぎることもなく、しかしけして奢らず探求心と理性の在り方について深く深く考えアウトプットし続けている。これが公判された1637年について思いを巡らせると、フランス・スペイン戦争の真っただ中。日本は江戸において徳川家光が政権を握り、九州では島原の乱が起きキリスト教信仰の弾圧が激しく、かくれ切支丹の文化が進化を遂げていたあの頃。
デカルトもまた盛大にキリスト教の影響を受け、しかし実に科学的な分析を重ねた考えを打ち出している。この本の第5部が非常に興味深い、何について記述されているかというと、<デカルトが探求した自然学の諸問題の秩序、特に心臓の運動や医学に属する他のいくつかの難問の解決と、「人間の魂」と「動物の魂」の差異>。文章自体はロジカルで穏やかなのだけれど、特に人間と動物の違いについてはかなり過激な内容もあり、ペット様時代の日本で受け入れられるのか定かではなく引用を控えようと思う。ぜひ、直接目撃して頂ければと思います。
そして、この本の和訳は素晴らしかった。たまに和訳された日本語の違和感に苦痛を覚えてギブアップすることがあるのだけど、こちらは本当に素晴らしく、まさか江戸時代の異国の哲学の本を読み解いてるとは思わなんだ、なのでした。
通勤の電車で一度読んで、美容院で再読、じっくりと染み込んだ。
*Writing BGM
womanとgirlを巧みに歌い分けて表現することで生まれる奥行に惚れる。
本当は話したいことがたくさんあるのに、それを耐える日々。言葉は伝えることなく留め続けたらいつか、自然消滅したり、忘れ去れるようなものなんだろうか。