吸収と表現の毎日

人生の余白を文字と旅で埋めていきたい

“Call me by your name”


CALL ME BY YOUR NAME - Trailer

2月に文化村でゴッホの映画を観た際に予告編として流れ、今か今かと公開を待ちわび、飛行機に乗る度に放映をチェックしてはため息を漏らしていたこの映画とついに対峙。

半月が遠くの空で輝く夜、会社を飛び出し、ひとりで観に行きました。

上映映画館をスマートフォンで調べた際に想像以上にヒット数が多く、「こんなに大衆的な映画館で上映するんですね」と、誰を相手ともせず私の心はつぶやきました。恵比寿ガーデンプレイスシネマライズ日比谷シャンテや文化村といった、その世界をもう飛び出してしまったんですね貴方というお方は。という気持ちに近いこの感情伝わるでしょうか。ひとりですから満を持してプレミアシートを選択、サンダルを脱いで両足をすっぽりロングスカートのなかに包み込んだ体勢で鑑賞。

 

なんと表現したらよいのでしょうね。

私の持ち合わせたほぼすべての感情が起動しました。

 

それも激しさという点では暴力的な感情は一切起きず、例えれば、湖面を大きく揺らさずに物体が溶けながら湖の一部となっていくような感じで。みんなで囲んだキャンプファイアではなく、一同寝静まったあとに何人かで囲む静かな火のような感じで。映画のなかで起きているすべての複雑さの中へ、これまでの人生と現在の私が抱き合って投身しながらぐいと共感した。美しいのです、美しいのですが、生々しいのです。生々しいのですが、これ以上ないくらいに繊細で美しいのです。シーンのひとつひとつも丁寧で、端折っていないし、焦ってもいない、演じている側と観ている側に感情の時差が生まれない映画。

 

繊細で美しい、一方で、ユーモアがあるから飽きない。知的欲求のグラスはもういっぱいになって溢れております。原作が届いたらきっと私は研究作業に入ることでしょう。映画のまんなかにいた二人の、その間に存在していた賢さがものの見事に豊かで、尽きることのない好奇心を引き出してくれます。


そして、両親という存在の強さや温かさ。
強さや温かさを超えた、遺伝子が通じ合ったものが感じる鋭さ、みたいなもの。

重要な要素として、"Later"という言葉の与える意味合い、受け取る意味合いが時間と共に変化し続けます。

 

最後に流れていた"Visions of Gideon"という音楽で、踊りのモチーフをつくりながら帰りました。ギデオンときたら、これは、"ヘブライ人への手紙"を再読しなければなりません。聖書のエピソードを自らのなかに格納しておく目的は、私にとって信仰よりも世界の理解のために限りなく近い。しかし、12歳の頃読んだ"善きサマリア人のたとえ"は人生を変えたなあとか、思いながら、いろいろ思いながらたゆたうように踊ります。

Visions of Gideon

Visions of Gideon

  • Sufjan Stevens
  • サウンドトラック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 #Call me by your name #君の名前で僕を呼んで #Visions of Gideon # the Old Testament #旧約聖書 #Gideon #ギデオン #ヘブライ人への手紙