吸収と表現の毎日

人生の余白を文字と旅で埋めていきたい

『未来の年表』読了.

 

amazonでもベストセラー1位を獲得し、リアル書店でも店頭の平積みやランキング発表で必ず紹介されている『未来年表』を読んでみました。

おすすめとしては、まずP.196から始まる「おわりに 未来を担う君たちへ」から読むことです。ここに著者の思いが詰まっています。

日本の人口減少や少子化について、選挙の度に候補者が街頭で声高に叫ぶのを耳にしているし、もちろん日々気になってはいるのだけど、この本の凄く良いところというか関心がひかれるところは「いつどんなことが起きる(と推測が立っている)のか」ということを顕在化しているところでした。テーマや内容によって、読み手が危機感を感じる勘所は違うと思いますが、個人的には年表にプロットされているタイトルを見て感じたことを簡単に書くとこんな感じです。

  • 2018年 国立大学が倒産の危機へ
  • 2035年 未婚大国が誕生

このあたりは仕方ないし、国益や競争力の発展に課題が起きるんだろうなとは感じつつも、生活者目線に限って言えば、選択が多様化するのでいいんじゃないかなと。

  • 2019年 ITを担う人材がピークを迎え、人手不足が顕在化し始める
  • 2016年 高齢者の5人に1人が認知症患者という割合になる
  • 2027年 献血必要量が不足しはじめる

これは危機を感じますね、仕事をする人間として人手不足は質・量ともに影響するし、AIの貢献が見込まれるのはまだまだ限られる領域。高齢者の割合がただでさえうなぎのぼりなのに20%が認知症というのは家族という社会のやりくりやファシリティの供給は大丈夫なんだろうか。献血必要量が不足するのも怖いですね、怪我より病気治療(白血病や癌治療にも)に使われる量が圧倒的に多いし成分によっては数日しか保存できないわけで、私は年間可能献血量MAXやっていますがこれからも続けようと思いました。みなさんもぜひ。

 逆に、

  • 2021年 団塊ジュニア世代が50代に突入し、介護離職が増え始める
  • 2033年 空き家が2167万戸を数え、3戸に1戸は人が住まなくなる
  • 2040年 全国の自治体の半数近くが消滅の危機に晒される

このあたりは新しい可能性も感じます。終身雇用を掲げてきた日本企業の働き方の変革が急務とされ、一方、若手に席を譲らざるを得ない状況も発生し変化が起きるのはポジティブ・ネガティブどちらもあるので興味深いです。また、介護に関する制度やサービスの多様化・量としての成長がみられることにも注目しています。日本は、何かについて爆発的に量を要求されると増やしながら圧倒的に質を整えていく傾向があるので、介護精度やサービスは凄く良くなる気がしますし、介護は情緒的にも物理的にも難易度が高いものなのでどんどんテクノロジーを導入していく気がします。自治体の消滅というのは、避けたいことではありますが、イノベーションチャンスにも感じます。物理的な資源がある地域、文化的資源がある地域、産業地域いろんな資源がありますが都市集中型から分散型にするためにはどんな自治体デザインが必要かとか、町の消滅のときにかならず発生する大きいものから小さいものまでの問題を早めにリスト化してみたいなとか、どうやったらいろいろな地域に経済的なメリットが発生させられるか、これからの時代のコミュニティ形成はどんなステップになるのか、遺せる文化に限りがあるとしたら何を守りたいかなど考えるだけでわくわくします。

自治体トップに求められる能力も多様化して非常に面白い時代だなあともとらえています。

書籍の中には、各課題が発生した原因や著者の考えがとてもシンプルにまとめられていますので、ぜひ2018年早目に読まれることをおすすめします。日本の人口減少というテーマをフックにこれから起きうる社会課題に関して自分の立場で直近向き合うべきことや関心のある領域について広くとらえられることができる一冊でした。

こちらから試し読みできます。

http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062884310