吸収と表現の毎日

人生の余白を文字と旅で埋めていきたい

『広告』読了.

日本の名随筆 (別巻23) 広告

日本の名随筆 (別巻23) 広告

 

さてさて世は新年度という今日(4/1)は、この本を開いて 改めて広告というものについて感じたり、考えてみたりなんかした。編者は、あの天野祐吉氏である。

彼の書く<CM天気図>というコラムが大好きで、小さい時からコラムが終わるその日まで本当に楽しみにして読んでいた。広告に興味があったというより、天野さんの世の中をコラムのなかに凝縮して映し、頻繁にチクリと風刺し、たまに優しく笑いかけるようなそんな雰囲気の文章が好きだったのだと思う。この文章、良く新聞社の審査を通りましたなあと何度も思った。そのぐらい彼が自由に語っているように見えた。

この書籍は37名が「広告」について記した短いエッセイがまとめられている。その編者としての天野さんである。やはりどうしても良く知る人の文章から読みたくなってしまうもので、①山口瞳氏→②荒俣宏氏→③安岡章太郎氏→④椎名誠氏→⑤林真理子氏→⑥東海林さだお氏→⑦開高健氏→⑧糸井重里氏→⑨南伸坊氏→⑩中島らも氏とぴょんぴょん間をとばして読み、最後頭からもう一度読んだ。ちなみに発行は1993年、私、9歳。阪神大震災地下鉄サリン事件も9.11テロも起きていなかった、あの時代に編集されている。

だから例えば山口瞳さんの文章の最後なんかは「いまや、マス・コミの全盛時代である。現代の広告製造業者たちよ、ちっとは恥を知るべきではあるまいか」と。荒俣宏さんは、森永の粉ミルク事件を取り上げている。東海林さだおさんは「日本人は、スローガンが好きな国民であるらしい」と、なんだか納得。

悪口言われがちな広告仕事だけれど、結構世の中に色んなもの産んできているよなあと思うわけです。この本はなんだか現在とちょっと昔を行き来できる電車に乗るような気持ちで読んで、たまにぷっと頬が緩むのでした。新橋の古書祭りで目が合って買ってしまったけれど、もうほとんど一般には売っていないようだった。

赤い電車

赤い電車

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くるり好きな人たちには、他のアーティストを好きな人たちよりももっと、強い共通のハッシュタグがついている気がする。「あなた、くるり好きですね?」と当てられる気がする。なんでだろう。