吸収と表現の毎日

人生の余白を文字と旅で埋めていきたい

『病理学講義』読了.

こわいもの知らずの病理学講義

こわいもの知らずの病理学講義

 

医師になり損ねた解剖好きの人体・生物学フリークが読むにはもってこいの1冊。満員電車なんのその、うまく隙間を見つけて最寄り駅から会社のゲートまで読み続けた。

理由は数多あるけれど、それはさておき、解剖医か外科医になろうとずっと思ってた。とにかく大人になった今、自らの数学の能力を呪いたい。しかし、人って、夢が朽ち果てても好きなものは好き。持ち合わせて生きてきた将来の夢は19歳で打ち砕かれたが、いわゆる生物学好きな自分は生き残った。お茶の水の医学書院やイカパカの生協に通って私の人生上、全く活かされない医学や人体学等の知識は溜まりゆく一方。最近は、一般の書店でも医科看護学生向けの書籍なんかがあって一人で萌えている。

で、この本!
もう最高。恐らく興味のない方には全く有益な情報になりませんが、たのしい文章を少しずつ今日も乱暴に前後構わず切って引用させて頂きます。

壊死(ネクローシス)とは違った細胞の死に方として、アポトーシスという細胞死があります。語源的には、枯れ葉がぽろっと落ちること、であり、ある意味では細胞の「自殺」です。

細胞の自殺…枯れ葉がぽろっとということは細胞の投身...

昔、近畿地区のある公立病院の外科にエホバの証人の信者である外科医の先生がおられて、輸血をせずに手術をしてもらえるとのいうので、信者の方がけっこう来られているという話でした。

人々が言葉にしない好奇心を突いてくるやつ。

この研究にヒントを得て、マイノットは、マーフィーと共に、悪性貧血の患者45名に生焼けの肝臓、2分の1ポンドを食べさせます。すると、42人のうち11人が死亡しましたが、31人が治癒しました。

42人のうち31人が治癒しましたが、11人が死亡しました ではない。

本の後半はほぼ癌に関する話で(結構詳しいのでお勧め)、その中にはアンジェリーナの予防的切除手術の話なんかも。読者に対して、倫理的な投げかけをとても自然に柔らかくしてくる。文章がとても面白い著者の仲野先生、趣味は義太夫語りと僻地旅行だそう。僻地旅行?もう、絶対どこかで出会って一緒に仕事がしたい。

*Writing BGM

 そういえば人生で初めて行ったコンサートはPhil Collinsだった。