吸収と表現の毎日

人生の余白を文字と旅で埋めていきたい

『偏愛ルネサンス美術論』読了.

 

この世界で唯一、きちんと読んだ漫画はヤマザキマリ。私はこの人の変人さがすごく好き、アナザースカイで見たとき、実物の圧倒的変態さに惚れた。あと彼女の描く登場人物の濃さに自らに遠くない何かを感じる。

彼女は14歳のときお母さんによってイタリアに放り込まれている。すごい。私の高校の先輩にもひとり、中学でイタリアに放り込まれて程よく不良化し日本に強制帰国させられている人がいてかなり変わっていて大好きだった(女性です)。あの国に若くして放り込まれると変になるんだろうか、ぜひうちのこどもを…。

本の話でした。話の中心は、ルネサンス人たちですが、特にマリ氏の言う

 その画家がどんな女性像を描いたかをみれば、その画家の人格が推し量れる気がします。ラファエロは「女性の美」を、三大巨匠(ラファエロ/ミケランジェロ/レオナルド・ダ・ヴィンチ)の中でいちばん重視した画家でした。

については私もずっとそう思っていたので激しく同意。女性に興味のない画家の描いた女性像のなんと味気ないことよ。例えば、モナ・リザにしても、ジネヴェラ・デ・ベンチにしても描かれた際の生気のなさ・・・。全く魅力を感じない、人気だけど。その点、ラファエロボッティチェリの描く女性像は見ていて豊かな気持ちになる。
ルネサンス美術の作品は結構ヴェネツィアにあるということに今さら気付き、なぜ7年前もっとヴェネツィアで美術館に行かなかったのか一瞬自分を呪う。凡庸と世界を巡っても仕方ない、学び続けよう、学び続けて初めて面白がれる自分に出会えるのだ。

今回も、この一冊から興味が湧いた部分を乱暴に引用してみよう。

浮世絵師と同様、当時のフィレンツェの絵描きには、自分が「芸術家」であるという意識はまだありません。そうした見方は、画家をとりかこむ社会の側にもありませんでした。いくら仕事が上手でも、画家はあくまでも「職人」にすぎず、絵描きの労賃も、最盛時のフィリッポ・リッピのような引く手あまたの人気画家にでもならない限り、他の職人と同じ扱いでした。職人である以上、絵描きも組合への加入が認められていましたが、それは「画家」の組合ではなく「薬剤師」のギルドだったのです。

なぜ絵描きが薬剤師と、って思いますよね。これはルカが関係するんです。マータイマルコルカヨハネー♪のルカ。画家も医師もルカを守護聖人としていました。詳しくはぜひお読みくださいませ。
最近、軽い本ばかりだわ、併読している塩野七生のローマ人シリーズをそろそろ読み切らないと。