吸収と表現の毎日

人生の余白を文字と旅で埋めていきたい

『もっとソバ屋で憩う』読了.

 

もっとソバ屋で憩う―きっと満足123店 (新潮文庫)

もっとソバ屋で憩う―きっと満足123店 (新潮文庫)

 

低GI食品だからとかではなくて、蕎麦が好き。会社に入って最初の部署は、12月の仕事納めの日にチームで蕎麦屋に集まるために10/1に蕎麦屋に予約を入れる習慣があった。

仕事納め日の蕎麦屋の選び方:場所は会社から徒歩圏内、競合を扱う部署と場所が一緒にならないこと、酒とつまみを楽しめること、蕎麦がおいしいこと、できれば座敷、そして絶対喫煙可。
まずは、瓶ビールで乾杯をして、出し巻き卵とか酢の物とかそうゆうのをお箸で突きながらお喋り、だんだんと一年を振り返るようになり、途中からあいさつ回りで完全に酔いが回った先輩がやっと合流したり、そうこうしているうちに熱燗になって、煮込みとかクセのあるものも味わって、「蕎麦頼んで!」と言われたらオーダーする。蕎麦が運ばれてくるとピタリとお喋りが止み、それぞれの蕎麦をすする音だけがする。その緊張感が素敵。まあ、その時点でかなり目が回っているのだけど、まだ昼の2時ぐらいだったりして、そのあとも納会が続く。あの素敵な習慣、異動したら無くて、寂しすぎて前の部署の蕎麦に合流した。

さて、この本を書いているのは(先輩に教えてもらったんだけど)荒俣宏氏の元奥様である杉浦日向子氏。
蕎麦領域における無知の知に関する欲求の強い人向け読本かな、と。蕎麦屋の羅列と寵愛ですから。その欲求のない人にとっては何の価値もない一冊かもしれない。神田藪で喉で味わう蕎麦を知り、葵祭で蕎麦寿司のおいしさに目覚め、家族で更科堀井に通い詰め、母と行くのは銀座四丁目の今はなき更科だった私にとっては必要な一冊。

軽井沢の蕎麦もいいよね、踏切のすぐ横。
蕎麦は「もり」派。あなたは何派。